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文系の春【心たのしい通勤路✿】

春がきました。

 

ずっしりしたウールのコートや毛糸のマフラーを、軽やかなスプリングコートやレースのストールに着替えると、

会社に向かう心も、軽やかに弾みます。

道中、満開の梅の花や、ほころびかけた白木蓮の蕾、タンポポやオオイヌノフグリ、いろいろな春の花が、目を楽しませてくれます。


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また、公園や街路樹のそばでは、子スズメたちが、ごはんを食べる練習をしています。

ただでさえ小さいスズメの、子どもはさらに小さくて、

茶色い子スズメたちが、木の上からみんな一斉にザァッと地面に散らばる様子は、まるで玄米のよう。

練習のあいだ、ピピピ!チチチ!とおしゃべりしっぱなし。とても賑やかで、かわいらしい光景です。

 

卵とヒナの時代を、一体どこで過ごしていたのか、私が目にするのはいつも、ごはんの練習ができるくらいに成長してからです。

 

冬に慣れきっていた心には、春のあらゆることが新鮮で、

「そうそう、春の風ってこんなに暖かかった!春の日差しって、こんなに明るかった!」と、思い出します。

 

それにしても、どうして植物は、毎年春には忘れずきちんと芽を出し、花を咲かせるのでしょう。

"子スズメのヒナ時代の謎"と並ぶ、春の不思議のひとつです。


私が、春の温かさのことなんかすっかり忘れて、セーターを重ね着して、暖房の効いた部屋で生姜たっぷりスープなんかを食べている間に、

彼らは、寒風吹きすさぶ中、枝の先に新芽や花のモトをコツコツと育てあげ、春までにしっかり準備を整えるのです。


カレンダーも長期気象予報もなくて、あと何日で春が来るか(それ以前に今年も本当に春が来るのかどうかさえ)分からないはずなのに、なんてかしこく、働き者なのか!

彼らの世界には、夏休みの宿題を831日までほったらかすズボラタイプや、春まで寝坊しちゃううっかり者は、いないのでしょうか。


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以前、まさに、植物の開花について研究をしているという人と知り合ったので、聞いてみたことがあります。

なぜ寒い冬に、まだ見ぬ春を想定して、花や葉っぱの準備ができるのか。

あの小さく硬い蕾のなかに、どうやって花一輪ぶんの花びらが詰めこまれているのか。

 

彼の説明はこうでした。


◆ ◆ ◆

すべては化学反応による現象である。日照の時間や紫外線の量、気温などによって、植物の中の物質Aが化学的に反応し、それが物質Bの変質を引き起こし、それにより物質CやDの生成が促され、何やらかんやら...。

つまり、開花や芽吹きは、生存環境からの化学反応によってあくまで外的に引き起こされる現象であって、木自体には意思も計算も無い。

例えばある冬の朝、真面目で賢明な木が「寒いけどそろそろ始めるか」と思い立ち、葉っぱや花びらをせっせと小さく折りたたんで、ひとつずつ蕾に詰めているわけでは決してないのだ。

◆ ◆ ◆


ハーフリム眼鏡の奥で目を輝かせて、理系オンチの私にもわかるように、かみ砕いた易しい言葉で、説明してくれました。

の景色を作っているものがすべて化学反応だなんて大変な驚きで、しばらく言葉を失いましたが、

うっかり者の木を見かけないわけが分かり、とても納得しました。


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しかし、世界の仕組みを、あんなに親切丁寧に教えてもらったのにも関わらず、

春の道を歩く私の頭の中には、木々たちが、風の便りで連絡を取りあって準備にいそしんでいる様子が、どうしても浮かんでしまうのです。


 ✿ ✿ ✿


春風「膳所ハイツのもくれんさん、もう花びらの準備終わったそうよ~」

 

膳所神社の桜「あらいやだ!私なんてまだ半分もできてやしない!私の方が、花びらの数が多くて、細工も細かいし、時間かかるのよね!ああ忙しい!」

 

春風「大変ね~。何カ月も前から開花や見ごろの予想を立てられて、前線を張られて、毎日朝と夕方にニュースで発表されて、国じゅうの注目の的ですものね~。」

 

城跡公園の桜「ええ、国花の威信にかけて、期待に応えなきゃ!だから遅刻は絶対に許されないの!それに花が終わればすかさず葉っぱも出さなきゃ、葉桜見物のお客も来るわ!葉っぱと花の製作を同時進行!ああ忙しい!」

 

幼稚園の梅「そこへいくと私なんか、花の準備はちょっと早めにしなくちゃだけど、花さえ咲かせてしまえば、あとは実の時期まであまり見向きもされないし、気楽なものだわ。ちょっと寂しい気もするけど。」

 

総門川のこぶし「あなたはいいわよ、たとえ見向きもされなくたって、みんなあなたを知ってるわ。私なんて、見る人見る人に言われるのよ、"あら、きれいなモクレンね"って!まったく失礼しちゃうわ!私はこぶしよ、こ・ぶ・し!」

 

義仲寺の柳「君たちいとこ同士だろう、仲良くおしよ。もくれんさんは、咲き方も控えめだし、清楚でいい子じゃないか。彼女、いつもひっそり空を見ててさ、きっと詩人なんだな。」

 

こぶし「でも世界には、空以外にも面白いものがたくさんあるのに、もったいないわ!私は花をなるべくあっちこっちに向けて、めいっぱい開いて、この世界を見つくしてやるの。だって待ちに待った春ですもの!」

 

ミヤザワさんちの椿「みなさんご精が出ますこと。わたくし気ぜわしいのは苦手ですの。葉っぱを一度に入れ替えるなんてまっぴら!そのために、雨にも負けず風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な葉っぱを持っておりますのよ。それにこぶしさん、わたくしだってさざんかさんとよく混同されますけれど、気にしませんわ。花たるもの、いつも静かに笑っていればよろしいじゃないの。」

 

子スズメたち「その蟻アタシの!」「ちがうボクが先だ!」「ニンゲンが来た!母さんが木に上がれって!せーの!」「ねーあっち行こうよ!」「だめよトンビが来る!」「トンビこわい!」「あれはカラスよ」「え、そうなの?じゃああれは?あれは?ねえあれはトンビ?」「下に降りろって!せーの!」「やったーミミズ!」「半分わけて!」「やだよボクんだ!」「また何か来た!」「そこのけそこのけ!」「おんまが通る!」

 

✿ ✿ ✿


毎朝たのしい、春の通勤です。

でも、とても自然科学的見地には立てません。

理系の人が見る春は、きっと私のとは全然違うのでしょうね。一体どんなのだろう。


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